アキバのアニメ会社「魚雷映蔵」代表の佐野リヨウタが、
オタクカルチャー各界のキーマンと共に、業界のイマについて語る対談コンテンツ。
今回は、ご当地萌えキャラの先駆者「東北ずん子」の運営をおこなっている小田恭央さんをお迎えして、
「東北ずん子」の誕生から、ご当地コンテンツの運営と戦略について語っていただきました。
「東北ずん子」誕生まで
佐野:僕も京都の「地下鉄に乗るっ」に関わっているのでご当地コンテンツ繋がりで、小田さんとずん子ちゃんとはお付き合いも長いですが、本日は改めてよろしくお願いします。「東北ずん子」を立ち上げられたのが2011年ですよね。その以前から小田さんご自身はキャラクターコンテンツに関わってらっしゃったんですか?
小田:いえ、元々は別の業界で仕事していたので、コンテンツ業界とはあまり関わりは無かったですね。
佐野:じゃあ、ほんとにゼロから「東北ずん子」は始まったんですね。2011年で「東北」というと、同年に起きた東日本大震災を連想するんですが、「東北ずん子」立ち上げのきっかけになっているんでしょうか?
小田:そうですね。当時、ゆるキャラが流行っていたので、同じような形で萌えキャラがブームになるんじゃないかと予想してまして、地方の萌えキャラを作ろうと思ってたんですよ。構想自体は元々考えていたベースがあったので、それを震災復興のために切り替えたという形ですね。
佐野:なるほど。いわゆる「萌えキャラ」ブームを先読みしてたんですね…!
小田:当時はくまモンとかが躍進していた時期だったので、なんとなく萌えキャラもいけるんじゃないかという実感はあったんですよ。
佐野:なるほど。今や「東北ずん子」は、ご当地萌えキャラの先行者というイメージですけど、それは小田さんの先見の明に裏付けされてるんですね。
運営は『おもちゃ』を提供するだけ
佐野:「東北ずん子」は、コンテンツ事業として見ても、常に新しいことにチャレンジなさっている印象です。そこに「地域活性」や「萌えキャラ」っていう属性が乗っかることで、新しい取り組みも、取っ付きやすくなっていると僕は分析してるんですけど、いかがでしょうか?
小田:そうですね。まずは知ってもらって、話題になればいいなぁと思ってます。流行れば、いずれライセンス料で収益を得られるという考え方なんで、それくらいゆるい感じがいいですよね。
佐野:ご当地コンテンツは「手作り感」にファンの人達が共感してくれるっていう側面はあると思うので、よく分かります。一方で、「東北ずん子」は、アニメやキャラクター好きの人たちが熱狂してるっていうよりも、「東北ずん子」というイノベーティブな取り組みそのものを面白がってる人たちが支持しているイメージがありますが、実際はどうですか?
小田:我々としては『おもちゃ』をひたすら提供している感覚なんです。例えば、3 D モデルや立ち絵があればそれで遊ぶ人もいるし、話す音声合成ソフトがあれば動画実況を作る人、歌う音声合成ソフトがあれば音楽を作る人もいる。「東北ずん子」を軸に、技術、ビジネスモデル、絵といった『おもちゃ』を提供して、その『おもちゃ』で皆が繋がっていくっていう仕組みになっていると思います。
佐野:なるほど。運営から提供される、何らかの「きっかけ」があれば、ファンの方々が勝手に転がしてくれて、自然と新しいステージに到達して、また新しい「きっかけ」が提供される…っていう流れができているんですね。
小田:そうですね。『おもちゃ』があると誰かが使ってくれるので、まずは『おもちゃ』を作ることを優先しています。多くの企業は、アニメやグッズというコンテンツを作る形で生き延びているので、ずん子ちゃんは全く違ったビジネスモデルになっていると思います。『おもちゃ』作りは人の技術を借りてきた方がいいものになるので、うちの会社の技術って実際は空っぽなんですよ(笑)
佐野:そうなんですね。そうなると他所から持ってきた要素と、キャラクターをどう掛け合わせるかを見極めることが大事になりそうですね。
小田:そうですね。「みんなが望んでいるけど、出来ないこと」をやりたいんですよ。例えば、今チャレンジしていることは、人間の口パクと連動して、リアルタイムで声が出る仕組みで、それが実現するとおじさんでも、見た目も声も女の子になれるんです。
佐野:ということは、僕の声もリアルタイムでずん子ちゃんに切り替わると!
小田:はい。まだ誰もやってないことなので、将来的にはそこまでできたら楽しいですよね。
次のページへ
– アニメ「ずんだホライずん」を作った際のこだわり
関連リンク
COMMENT コメント