“異次元TOKYO” 篠田 利隆 × “魚雷映蔵” 佐野 リヨウタ 対談
好きな人のための文化 オタクカルチャー入門編
エンターテイメント性が高い広告
篠田: 僕は電通テックというCMプロダクションにもともといて、自分も含めめちゃくちゃTV中心の広告業界だったんですが、ちょうど徐々にWEB広告が波が映像業界にも入ってきました。
今まで受動的に見せられていた広告が能動的に楽しめるものとしてWEB広告になったと思います。エンターテイメント的なことが広告でしやすくなったんではないかなと思います。
佐野:たしかに、そうですね。例えば、YouTubeを見てる人に、いかにスキップさせないかってことで、半強制的に見せるTVCMのアプローチとはまた少し違いますもんね。
篠田: TVは受動的に受け止めさせるために剛速球でメッセージを投げかけますが、WEB広告は自分から見たくなる仕組みが必要なんですよね。
アニメ広告の広がりは、「涼宮ハルヒ」「けいおん!」などから徐々に浸透してきて、僕的にはわかりやすかったのが「魔法少女まどか☆マギカ」あたりから広告業界の方もアニメを見だした方が増えたと思います。「涼宮ハルヒ」「けいおん!」はお話しとか衝撃的な展開とか作品として面白かったのですが、「魔法少女まどか☆マギカ」はデザインの要素が広告的だなと感じましたね。グラフィック的な化粧品広告とか清涼飲料水のシンプルに女の子描く時や髪のなびきの画角とか・・
佐野:今まではそんなになかったですもんね。
篠田:新房監督が生み出したシャフト臭など言われてましたが、デザイン的なアプローチをしていて、「化物語」でその雰囲気がでてきて、「魔法少女まどか☆マギカ」でがんっと、ストーリーとともに広告業界の人にもわかりやすかったのではと・・・。
その時にコミケ、来ている人の層が変わったというか増えたみたいな。オシャレな人とか(笑)
佐野:好きな人が好きという特殊な文化では無くなって来ていて、今はオタクというジャンルの境目はないじゃないですか。みんな「鬼滅の刃」を見ていますもんね。例えば、「君の名は。」もヒットしましたけど、あの作品はジブリ的なアプローチの延長線上にあると思ってたので、ヒットの理由は納得できたんですが、「鬼滅の刃」は本来ならオタク側のコンテンツですもんね。
篠田:すごい時代になりましたね(笑)(魔法少女まどか☆マギカの時に)SWITCHの「ネ申1oo」特集(スイッチのオタクカルチャーの神100特集)とかあってニコニコ文化がクロスオーバーしたり、その後「キルラキル」が文字のデザインなどでより広告業界でもわかりやすく盛り上がった感じがします。
広告ってデザインだと思うんですよ、他者を表現するというか、モノを売るために広く伝えるのが基本なのでこの文化もそこのアプローチではまるんだとみんな気づき始めたんだと思います。アニメ広告をやりはじまた時は全く別の水と油くらい違う業界でしたが、今はアニメ業界も広告業界も前よりは距離が少し近づいてきたかなとも思います。
また別のベクトルでは(アキバカルチャーでいうと)アイドル(でんぱ組とか)が盛り上がっていましたね。音楽やアイドルなどのPVやMVは、MV業界だけでなく広告業界の方が関わることも増えてきているので、意外と音楽やアイドルが業界を繋いでいるのではないか・・・とも感じます。
佐野:その頃の秋葉原のカルチャーはそんなに詳しくないんですけど、時代のニーズに併せて変化している感じがしますね。
篠田:そもそもは実写の監督だった自分も、当時プライベートでも仲良くさせていただいている作画監督の浅野直之さんにバンもん!のMVでアニメーション描いていただいて、あの時にTVアニメとは違うやり方でアニメを作る機会が少しづつ出てきたんではないかなと思います。
佐野:そういう意味では、魚雷映蔵はTVシリーズのアニメ制作は全くやって来てないし、あくまで個人作家レベルでアニメを作っていた延長で広告という手法に行き着いたので。篠田さんがおられる「広告業界」という海に向かって、僕たちはイカダを漕ぎ始めたところです(笑)
篠田:最初からすごかったじゃないですか。魚雷映蔵さんのHPをみて作画とか綺麗だなと。どうやってやっているのか興味持ちましたよ。実際に初めて会社にお邪魔した帰り道、人数が少ないのにあんなクオリティ出せるんだ・・・と驚きました。
佐野:ありがとうございます(笑) 例えば、映像という分野においてミュージックビデオって、広告という側面もあるし、アート・娯楽作品という側面もあって、映像の一つの分野として成立しているじゃないですか。そういう意味ではアニメCMも新しいアニメの形として確立してきたんではないでしょうか。
篠田:YOASOBIのMVをさせていただきましたが、アニメMVも増えていますもんね。
佐野:ニコニコ動画のお陰でネットアニメの野良アニメーターみたいな人が増えた感じがします。その人たちが、台頭してきたことによってアニメ業界と広告業界の溝を埋めているような気がします。実際、気になるアニメのCMのスタッフ欄を見てみたらニコ動のアニメーターの何とかさんだ!ってこともありますもんね。
篠田:広告業界もクライアントから望まれるトーンがごりごりの深夜アニメではないときに、個人アニメのようなトーンのCMの依頼が増えています。
鬼滅の刃などの大ヒットアニメやアニメMV的なトーンを好む方は、アニメ好きな人とリンクはしていてもいわゆるアニオタとは別のところにいると思うんですよ。フラットに好きなアニメ作品見たいから見ていて、それしかみていないかもしれないし、普段はTVドラマを見ているかもしれないし・・。
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