サロン・デル・マンガ スペシャル!
連載「漫画 × バンド・デシネ!」では、2017年に急逝した谷口ジローのバルセロナ展について毎週取り上げている。今回紹介する『犬を飼う(Tierra de sueños)』は、1991年に制作された、人間と動物の絆の物語だ。
スペイン語のタイトルを和訳すると、「夢の地」となり、原題とは異なる意味を持たせている。本展示で、スペイン人作家でコンピュータエンジニアでもあるオスカル・グアルは、「タニグチにとっての夢の地とは、神々の住む国ではなく、日常である」と品評している。
作品中、子宝に恵まれなかった夫婦が、長年我が子のように可愛がっていた愛犬タム。そのタムが老いて臨終の時を迎え、14年振りに2人に静寂が訪れる──。
大半のペットは人より寿命が短く、人が看取る運命にある。我が子を看取らなければならないとしたら、それは親を看取るよりも無念なものだろう。
今、一つの命が死にゆくという短い時を、この作品では実に克明に、奥深く表現している。「ペットを亡くす」「肉親を亡くす」という誰でも経験し、耐え難いが、しかしどうにもならない日常を描く。生きることとは何かを静かに、そして力強く訴える作品だ。
<連載第44回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その㊹ 谷口ジロー「バルセロナ展」:『欅の木』
©
Jirō Taniguchi
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