サロン・デル・マンガ スペシャル!
連載「漫画 × バンド・デシネ!」では、2017年に急逝した谷口ジローのバルセロナ展について毎週取り上げている。今回は、『父の暦(El almanaque de mi padre)』を紹介する。
ライターで日本の漫画やアニメのスペイン語版翻訳も手がけるマルク・ベルナベは、同作を「タニグチの作品の中で最もいとしさを感じさせる作品の一つ」と位置付け、「並外れた感受性で描く類まれで衝撃的な感情の物語。感動せずにはいられない」と評する。
物語の主人公は、上京し大学卒業後、デザイン関係の仕事に就いている”私”(山下陽一)。故郷の鳥取で理髪店を営んでいた父の突然の訃報が届き、葬儀のために帰郷する。
若者が親を否定する態度は、ある意味では成長し自立していく過程だ。しかし地元の人々が、故人を偲び交わす思い出話を聞くうちに、自分は実の父親の事を何ひとつ知らずに生きてきたことを気づかされる。そんな自分の過去を悔いていざ心を開き語り合いたいと思った時には、もう時すでに遅し……。
鳥取出身で漫画家になるために上京した谷口ともダブって見える本作。家族の愛と絆を大事にするスペインの人の心を打つのは、想像に難しくない。
<連載第40回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その㊵ 谷口ジロー「バルセロナ展」:『遥かな町へ』
©
Jirō Taniguchi
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