サロン・デル・マンガ スペシャル!
連載「漫画 × バンド・デシネ!」では、2017年に急逝した谷口ジローのバルセロナ展について毎週取り上げている。今回紹介する『欅の木(El olmo del Cáucaso)』は、1999年に制作された、自然や庭への思い入れ深さが伝わる実に日本的な作品だ。
自らが築き上げた会社の一線を退いた初老の男性・原田とその妻は、共に首都圏郊外の一戸建てに引っ越してきた。中古物件を購入時に惚れ込んだ梅、木蓮、椿などの庭の木々を楽しみにして到着すると、庭はきれいに片づけられており愕然とする。しかし、庭の隅になぜか1本の欅の木だけが残されていた。そしていつしか、この欅の木の移り変りを観るのが二人の楽しみになった。
ある日、その庭をキョロキョロと見入る老人男性の姿が……。聞くと、何やら以前この家に住んでいたという。緑に囲まれた静かな老後を過ごすつもりだった初老夫婦だったが、当初思い描いていたシナリオとは、一味も二味も異なるストーリーが展開していく──。
<連載第43回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その㊸ 谷口ジロー「バルセロナ展」:『センセイの鞄』
©
Jirō Taniguchi
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