15回にわたり集中連載した「第35回バルセロナ国際コミックフェア」。訪れた会場のあるスペインで、人々は驚くほど多くの日本のマンガに親しんでいた。スペインの本屋で実際に見つけた日本のマンガを紹介していくこの連載第10回目は、細田守の『おおかみこどもの雨と雪(WOLF CHILDREN)』について取り上げる。
『おおかみこどもの雨と雪』は、2012年に東宝から配給されたアニメ映画。モチーフの狼男伝説は世界各地にあり、厄介もの扱いされているが、地域によっては高貴な血統を意味する場合もある。
ニホンオオカミは1世紀前に絶滅したとされているが、現在でも目撃情報はある。その末裔の狼男と人間のカップルと、生まれてきた子どもたちの雨と雪。無邪気で可愛らしくも、周囲からは煙たがられる存在で、甘味と酸味とほろ苦さがブレンドされ甘夏の様な何とも言えない味を物語に醸し出す。
同じく細田守の作品『バケモノの子』とは異質で、数奇な境遇にある若者の葛藤と挑戦を描いていることが共通している。これは幼少期に吃音症があり、小学校低学年の時に特別支援学級に通っていたという監督自身の体験が、創作に強烈なインスピレーションを与えている可能性も考えられる。
<連載第9回はこちら>
【スペインで見つけた日本のマンガ】その⑨ 鳥山明の『Dr.スランプ』
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