「バンド・デシネ」連載第19回目は、ジャン・ジローの『ブルーベリー(Blueberry)』について取り上げる。
『ラッキー・ルーク』と同様にバンド・デシネが描いた西部劇で、40年もの期間にわたって制作が続けられた、カウボーイのマイク・ブルーベリーを描いた、アメリカの古典的なヒーローものだ。南北戦争の勃発でゴタゴタに巻き込まれたり、アメリカ・インディアンの権利を守ったりと大活躍し、内戦終息後には合衆国軍の中尉として大酒呑みの相棒と共に西部に遠征するなど、とにかく多彩なストーリーが展開される。
この作品において作者は、SFファンタジー系の作品に用いるメビウスのペンネームではなく、本名のジャン・ジローとして制作に取り組んだ。ピカソがピカソらしくなる前の「青の時代」の作品のように、同じ作者ながらSFを描く時とはまったく異なるスタイルを採用している。
しかし、デタラメに描き方を変えているのはなく、そこには確かな技術と表現力が伴っている。過去も未来も自由自在に、下書きもせずにスラスラとものすごいスピードで描き進めていく姿は、天才的だ。
日本のアニメーター・宮崎駿や漫画家の谷口ジロー等、世界の名だたるクリエーターに影響を与えた腕は伊達ではない。
<連載第18回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その⑱ ルネ・ゴシニの『アステリックス』
(C)
Jean-Michel Charlier, Jean Giraud, François Corteggiani
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