15回にわたり集中連載した「第35回バルセロナ国際コミックフェア」。訪れた会場のあるスペインで、人々は驚くほど多くの日本のマンガに親しんでいた。スペインの本屋で実際に見つけた日本のマンガを紹介していくこの連載第15回目は、浦沢直樹の『MASTERキートン(MASTER KEATON)』について取り上げる。
『MASTERキートン』は、1988年から1994年にかけて連載された漫画作品。その後も不定期で制作されており、アニメーションにもなっている。
オックスフォード大学卒の考古学者で、保険調査員、そして軍人。そうそうたる数の肩書の割に、あまりに物腰の柔らかいイギリス人ハーフの主人公である平賀=キートン・太一は、講義をさぼっては保険金絡みの調査などのアブナイ橋を渡り、軍隊仕込みのサバイバルスキルで難をくぐり抜ける。
絵に描いた様な悪者を成敗する姿はタフガイそのもので、檀上での頭でっかちなインテリの風貌とのギャップにやられる。罪を憎んで人を憎まない、気の優しい男だ。
劇中の人間模様やストーリー展開、奥深いテーマ設定は、かなり濃密で手に汗握る。読み終わった後は、水をグラス一杯、一気飲みしたくなる。
こんな男、本当にいたら、乙女心がグラグラになりそう。でも、正体を明かさないので、出会ってもわからずじまいで終わってしまうに違いない。ちなみに本人は、燃えるような恋で学生結婚し、バツイチの身。完全無欠で隙のないように見えて、人間臭い側面も魅力的だ。
<連載第14回はこちら>
【スペインで見つけた日本のマンガ】その⑭ 矢沢あいの『天使なんかじゃない』
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