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『僕は君を太らせたい!』2巻発売記念! 茸本朗さん(原作)と横山ひろと先生(作画)に、作品のつくり方や見どころを聞く

横山先生との出会い

横山先生の初期短編集も拝読させていただいたのですが、シチュエーションコメディがお好きだったのでしょうか

横山:そうですね、最初は「週刊少年ジャンプ」に持ち込もうとしてその路線の漫画を描こうとしていましたが、自分でもわかるほどつまらないものができてしまったんです。何が良いか悩んでいたところ、「笑う犬の冒険」のようなコントが好きで、ああいったフリがあってオチがある構成が、自分の絵に馴染んで上手くいきました。

初期短編集に収録されている「vs.父」は、僕に好きな人ができてそのお父さんと会う場面を妄想した時、その場から逃げたいと思った経験から生まれた作品でした。当時、ほぼ漫画のアシスタントでも食えてないくらい無職だったので、父親から見たら僕はどんな風なのだろう、と。それで紹介される彼氏としてロボや怪獣が出てきたり、それでも最後はやっぱり金を持っている男が強いなと。

商業デビューされる前にはコミティアなどで活動されていたようですが、どういった経緯でプロデビューに至ったのでしょうか

一宮:横山先生が、コミティアの出張編集部に持ち込んでくださったのがキッカケでした。当時の私は講談社の「イブニング」にいて、名刺をお渡ししてやり取りしたあとに、「vs.父」を新人賞に投稿してもらってからのお付き合いです。

「イブニング」で横山先生の読み切りを何作か担当した後に、僕がフリーの編集になったんですね。今でこそ小学館でお世話になっていますが、横山先生を別の出版社の雑誌に連れていくのは講談社に対して不義理なので、当初そういう気はなかったんです。

ただ、しばらくしてから私が茸本さんと知り合って、漫画の原作を担当いただけるとなった時に、最初に思い浮かんだのが横山先生の絵でした。それで声を掛けたら「やります」とのことだったので、向こうの担当にも筋を通して、描いてもらうことになりました。

 

かわいい女の子を太らせたい!

では、その横山先生の初連載となりました『僕は君を太らせたい!』の主人公・木野さんや、ヒロイン・都田さんのキャラクターはどのように作っていったのでしょうか

一宮:基本的には横山先生に何パターンか出してもらって、それを私と茸本さんとで話し合いました。

茸本:キャラを作るという行為は、僕にとって最初のフィクションへの出会いだったので、2人の力に頼りました。僕はこういう女の子を太らせたいなというのと、こういう男がキモいなっていうのを描いてもらって、結果としてキモい男が僕に似てきた感じですね(笑)。

木野さんが、都田さんの美味しく食べる姿が可愛くて魅力的だと思うところは分かるんですけど、「太らせたい!」……なぜ太らせたいのかなと

茸本:これも舞台装置に関係してくるのですが、彼女が病気になるんです。それを治してあげたいというのが、木野くんが一緒にいる理由の一つでもあるんですね。

僕個人としても、ガリガリに痩せている女性が苦手で……。お節介ながら、みんなもっと食べた方がいいと思うんですね。太るくらいガンガン食べてくれるような女の子だったらキャラとして動かしたいと思えるので、彼女のキャラについては単純に僕の性癖が表れた形です。

ああいった野食をしていくことで、実際に太れるんですか?

茸本:物語のスタートが春だったので、まだちょっと難しいです。初夏から秋にかけてはどんどん食べ物が増えて、秋は魚が美味いし、冬は獣がいっぱい獲れるしで、楽になっていくと思います。今はカロリー収支的にむしろマイナスだと思うので、早く美味しいもの食べさせてあげたいですね。

 

 

食材を描くにあたって大事なこと

そのように様々な食材が出てくる中で、横山先生が作画の際にこだわっているポイントはなんですか?

横山:後でチェックは勿論していただけるんですけど、野草やキノコを間違えないように描いています。

茸本:いつも申し訳ないと思っているのですが、こちらから提供できる資料が乏しくて。写真は自分で撮ったものがあるのですが、やはり資料はあればあるほど良いでしょうし、例えばカメを解体する際に立ち会っていただいたんですけど、そのようなことをいつもできれば一番良いんですよね。

生物を学術的に見た時の視点と、作画で必要な視点とは全く違うと思うので、その中でもちゃんと描いていただいているのは、本当に有りがたいです。

カメの解体には立ち会ったのですか?

横山:そうですね。漫画だと割と簡単にさばいていますけど、めちゃくちゃ大変そうでした。カメって結構臆病なので、実際は首を誰かに引っ張って持ってもらって、ギコギコってエグい感じで切って。


読者プレゼント用の複製原画にサインを入れる茸本さん。

 

原作者と漫画家の関係性とは

茸本さんは、ブログを書く感覚と漫画原作を書く時の違いや、気をつけていることはありますか

茸本:何もかもが違っていて、まだ戸惑いが抜けていないです。ブログでは自分が面白いと思うことを、人に読まれやすい文体にしたり、くだらないことを書いて喜んでもらおうという意識が強くあります。

一方で漫画はフィクションなので、大事なのは読者へのホスピタリティ。自分がどうということよりも、読む人が面白いと感じてくれるにはどうしたらいいか。そこの思いやりがなかなか足りなくて、自分が面白いと思うことと、読む人が面白いと感じることの違いを埋めているところですね。最近の課題は「現実だとそこまでうまくいくかはわからないが、理屈上ではできるはずのものをうまくストーリーに入れること」です。

ちなみに、原作者と漫画家が上手くやっていくためのコツみたいなものってあったりしますか?

茸本:僕は絵が描けないので、絵が描けるっていうのはもの凄いことだと思っています。なので、そこに注力していただくために、僕としては締め切りを守って、出来るだけ早くお出ししないとな、と。あと、やはり横山先生はギャグがすごく面白いので、気持ちよく描いていただけるような場を作ることも大事かな、と。

横山:自分で「これは絶対面白いぞ」って確信を持って描けたらそれは気持ちいいかもしれないですけど、茸本さんには「もっと作画を困らせてやろう」くらいの気持ちで書いてもらっても構わないんですよ。

茸本:だって、「野食の話」ってだけで相当困るでしょ?

横山:いや、野食の話はむしろ面白くしやすいからありがたいですね。例えば「落ち込んでいる少女が道端で缶コーヒーを買って、そして何かあって立ち直る」といった話の方が難しいです。多分、一宮さんも茸本さんも僕のことを考えて、描きやすいようにやってくれていると思います。

茸本:作品が面白くなるかどうかだけなので、描きやすいように~と考えたことは一切無いです(笑)。

横山:だから、描きやすいかどうかはそれほど問題ではないですね。むしろ、「これを描けたら面白くなるはずだ」って確信を持ってアイデア出していただけたら、僕はちゃんとそれを形にするだけなので。僕もまだまだ未熟なので、大変だなって思いますけど、無茶振りされた方がやってやろうという気持ちにもあります。

漫画のネタ出しで苦労されているところってございますか

茸本:野食というネタにおいて、僕の感性・感覚が、普通の人とは違うというのを痛感していて、そこに毎回本当に苦労していますね。自分はあまりグッとこない食材が、他の人からみたらネタとして面白かった、あるいはその逆のパターンは、普段のブログ執筆においてもあるんですよ。その中で、いま重要だなと思っているのは、いい意味で期待を裏切れること。

具体例を挙げると、”予想外の方法で採れる食材”とか”猛毒なんだけど食べられるキノコ”とか。読者の方が「へーそうなんだ」って思えるもの。一方で「見た目がすごく怖いけど、食べたら美味いよ」みたいな食材は僕は好きですけど、それだけだと漫画のネタにするには弱いのかなと、って思うことがあって。

「どの食材をどうやって捕まえるか」というポイントでネタ出しの苦労が集中していて、そこさえ出来上がったら、木野くんはこういう動きをするだろう、都田さんはこういう反応をするだろうというアクションは後からついてきますね。

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