「バンド・デシネ」連載第9回目は、寺田克也の『ルーヴル消失』について取り上げる。
バンド・デシネ作家のエンキ・ビラル、メビウスのペンネームも持つジャン・ジロー等に影響を受け、その空間表現とキャラクターに強烈な個性を吹き込む画風は、読者をファンタジーの世界に誘う。
ルーヴル美術館という屋内空間を広い世界、現実を狭い世界と位置づけする逆転のコンセプトが興味深い。不動産の一坪などといった意味ではない。そこには美の宇宙が果てしなく広がり、私たちが普段どれだけ限られた発想の中で生活しているか、ということだ。
フランスの文明が消滅しない限り、存続し続けるであろうルーヴル美術館がパリから消える、その意外なストーリー展開。しかし美術品たちは、なくなったのではなく、自由に姿を変え、世界中に飛び散って、存在している。芸術は無限の自由があり、宇宙のどこにでも行ける。作品を通じ、寺田はそのメッセージを伝えている。
<連載第8回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その⑧ 松本大洋の『ルーヴルの猫』
(C) Louvre
(C) Katsuya Terada
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