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【ブレイン・インスパイヤード・コンピューティングシンポジウム2017レポ③】『攻殻S.A.C.』×『人工知能』 ゴーストって何だ!?~ヒトとマシンが共生する社会~

「ブレイン・インスパイヤード・コンピューティングシンポジウム2017」イベントレポート第3回は、”ゴースト”をテーマとした議論から、未来の展望までをお届けする。

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■ゴーストって何だ!?

本稿では引き続き、脚本家・藤咲淳一氏と声優・田中敦子さん、そして大阪大学大学院情報科学研究科教授・前田太郎氏、大阪大学NBIC協働研究所招へい教員・西原康介氏によるパネルディスカッションの模様をお届けする。司会進行は大阪大学NBIC協働研究所副所長・加納敏行氏。

議論の主人公は”ゴースト”だ。このミステリアスで、抽象的な存在を、登壇者はどのように捉えているのだろうか。

田中さんはゴーストについて「一般的には”魂・霊魂”と言われているものだと思うが、草薙素子的にいえば”直感・インスピレーション”のような感覚でとらえていた」と語る。

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(画像は映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』より)

藤崎氏も「まだ、(ゴーストは何かを)見つけきれていないのが、本当の答え」と前置きしつつ、人気キャラクター・タチコマについて言及。9体のタチコマは当初、同じAIを搭載される。彼らはお互いの経験を、ネットワークを介して”共有”してゆく。

「”自分でないもの”を見つめながら、”自分”が生まれてくる」ような感覚。並列化の中で個性を獲得する彼らの変化を、藤崎氏はそんな言葉で例えた。「(ゴーストは)自分と違う”違和感”の中から生まれるものなのかもしれない」と、作品を振り返りつつコメントした。

これ対して、前田氏は脳が必ず行う行為、”予測”をキーワードに知見を披露した。過去の経験から未来を予測すること、そして、予測との不一致に情報解析のリソースを当てること。「これらは生物学的な知能のひとつだ」と前田氏。加えて、工学的に言い換えれば「予測と結果の”差”を計算する」事だと補足した。続けて前田氏は、話をつまらなくして申し訳ないが、と前置きしつつ「しかし、こう考えると(より高度なAIを)作れそうなんですよ」と語った。そして、「ある種の生物的な知能には、ゴーストが宿ると思う」とコメントした。

最後に西原氏は、愛や人間性、そしてそれをとりまく関係性をゴーストとしてとらえれば、定量化できそうだと実学的な視点でコメントした。

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(画像は映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』より)

■人工知能にゴーストは宿る?~ヒトとマシンが共生する社会~

それぞれの”ゴースト論”が語られたのち、話題はより具体的な方向に。進行を務める加納氏から、「人工知能にゴーストが宿ったら、どうなるのでしょうか?」と問いかけが投げられた。

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(画像は映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』より)

『攻殻S.A.C.』のなかで、バトーは1期のタチコマにだけ、天然オイルをプレゼントする。藤咲氏は「その中で生まれた”違和感”がゴーストを生み出したのでは」と振り返る。

前田氏は「その違和感に”価値観”を持てるかどうかがポイントでは?」と語る。AIがヒトと共生していくためには、”社会の価値観”を共有できなければならない。「全ての人工物は人間が親。”自分で子供を良い子に育てる”と考えるしかない」とAI脅威論に一石を投じた。

西原氏はヒトとの関係性を軸に、客観的な意見を述べた。「(AIの主観ではなく)例えばタチコマを人間らしいと思う人が多ければ多いほど、ゴーストを宿していると言えるのかも」とコメント。たしかにゴーストという概念は、”作る人”ではなく、”使う人”が宿すものなのかもしれない。

議論の最後には、「ヒトとマシンの共生」について意見が飛び交った。

藤咲氏、田中さんは「タチコマがもし存在したら、愛着をもつだろうね」と話しつつ、「自分よりも脚本が書けるAIが登場したら……」、「声優の世界でも人間がいらなくなるかも……?」と未来を予想する一幕も。

前田氏は「老齢の悟りと言うべきか、(その時は)俺は良い弟子を作ったと思うべきなのでは」と語り、会場を沸かせた。そして「共生の限界は、”人間がどこまで覚悟を持てるのか”にかかっている」とコメントした。

最後に西原氏より、互いに共生してくためのヒントが示唆された。「わからないものをわからないまま使っているから、不安なのではないか」。「正しく透明性をもって情報を伝えていくことが重要なのではないか」と語り、議論に幕を下ろした。

たしかに筆者も、イベントに参加することで新たな知見を得ることができた。それによって、AIに対する考え方も大きく変わったと思っている。SFが現実になるとき。荒廃した未来ではなく、穏やかな”共生社会”がそこに存在するだろう。物語の想像力に敬意を払いつつ、科学の進歩を今後も見守っていきたい。

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(パネル展示の模様。多くの人が集まり、議論に花を咲かせていた)

■連載第2回はこちら
【ブレイン・インスパイヤード・コンピューティングシンポジウム2017レポ②】『攻殻S.A.C.』×『人工知能』 素子は省エネ20ワット? ヒトとマシンの境界線

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■映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』
4月7日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国劇場にて公開
配給:東和ピクチャーズ

(C)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

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