「バンド・デシネ」連載第21回目は、ダビッド・ベーの『大発作(L’Ascension du Haut Mal) 』について取り上げる。
『大発作』は1996年から2003年にかけて制作され、フランス最古のマンガ関連のイベントであるアングレーム国際漫画祭で何度もノミネートされている。この自伝的作品は、作者であるダビッド・ベーの幼少期のバックグラウンドが色濃く表れている。多くの偉大なクリエーターがそうであるように、作者の心には大きな溝が存在している。
少年時代にてんかんを発病した兄と、藁にもすがる思いで東洋医学や心霊療法の類いまで手を出す両親。それを目の当たりにしながら、救いがたい現実から逃避するかのように、自らの内のファンタジーにどんどんと入り込んでいった。それが結果として、類を見ない創造性を生んだのだ。
大きなコントラストを用いたモノクロームのイラストは、ジョルジュ・ピシャールやジャック・タルディなどから影響を受けていると言われる。その版画の様な黒色の使い方は特徴的で、あどけなくも暗い子供の心理状態と、その黒をベースに花開く独特の表現力が読者を虜にする。
同作のシリアスなテーマ性と作風スタイルはバンド・デジネ全体にも大きな革新をもたらした。サクッと読めても実はとても重く、人生の教訓となるような物語。一見の価値ありだ。
<連載第20回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その⑳ スクイテンの『闇の国々(Les Cités obscures)』
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David B.
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