「バンド・デシネ」連載第14回目は、エンキ・ビラルの『ニコポル三部作』 (La Trilogie Nikopol)について取り上げる。
『ニコポル三部作』の「不死者のカーニバル」編は、2度の核戦争を経てエイリアンとファシズムが渦巻く、荒廃した2023年のパリが舞台。現在のフランスが抱える難民の流入、テロリストによる反社会的破壊活動、フランス大統領選挙での極右の台頭などを予言したような設定でドキッとする。日本周辺では、朝鮮半島での核戦争危機も高まりをみせておりダブって見えるかもしれない。実刑判決により30年間冷凍保存で地球軌道を周回させられた後に帰還した、主人公のアルシド・ニコポルの設定もサイエンスフィクションならでは。
「罠の女」編はロンドンが舞台。青い髪と白い肌の女性特派員ジルは、エジプトの神ホルスが帰還したことによって大きな陰謀に巻き込まれていく。
「冷たい赤道」編はチェスとボクシングを組み合わせた、一風変わったチェスボクシングというスポーツが登場する。
『ニコポル三部作』はゲーム化や映画化もしていて、その近未来的な美しい描写は、『ブレードランナー』など多くのSF映画に影響を与えたと言われる。元々1編ずつ出版されたものが後になって、3編にまとめられたもので、別々に読んでもストーリーとしても楽しめる。いま世界で話題のフランスを、バンド・デジネが描く近未来で覗いてみよう。
<連載第13回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その⑬ メビウスの『アンカル』
(C) Enki Bilal
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