「バンド・デシネ」連載第7回目は、 五十嵐大介の『ニケのうた』について取り上げる。
地上では今まで数多くの文明が栄え、そして滅びた。その痕跡を現代の我々は目にし、手にする。
眩しく光あふれる海面の下。海底に埋もれる彫像の第一発見者は、なんと人魚。そのモデルは言わずと知れたルーヴル所蔵の『サモトラケのニケ』だ。このストーリーが、人類の文明が消滅する前なのか後なのか、いずれにしてもここには我々の知らない別世界が広がる。
人魚が朽ちた女神像の首を海から集めたモノで直すと、女神像は美声を発し、メロディーに吸い寄せられるように、海の巨大生物が姿を現す。
自然の空間、とりわけ水中を緻密にそして幻想的に描写する五十嵐大介の技量は圧巻で、物語うんぬんの前に、その絵を見ているだけで心が透きとおるように癒される。水彩画のように額縁に入れて、飾りたくなる。
ファンタジータッチで遊び心があふれる作品だが、その奥底には「人間と自然」、「文明の盛衰」というスケールの大きな本質的テーマが含まれている。
<連載第6回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その⑥ 坂本眞一の『王妃アントワネット、モナリザに逢う』
(C) Louvre
(C) Daisuke Igarashi
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