「バンド・デシネ」連載第8回目は、松本大洋の『ルーヴルの猫』について取り上げる。
世の中には掟がある。それは動物たちにとっても同じだ。世界は同じ空間に、様々な掟のレイヤーが重なって出来ているのだ。
松本大洋は作中で猫も題材に取り上げられる『鉄コン筋クリート』で、ヤクザの縄張りとそこに暮らす互いに精神依存する浮浪者を描いた。『ナンバーファイブ 吾』では争いと命そして未来を描いた。
『ルーヴルの猫』でも、縄張り、争い、将来といったテーマに共通項があり、作者の個性がとても伝わってくる。
軽いタッチで描かれた猫は、ほのぼのとして愛らしい。私たちが普段見かける猫は時計も見ずに日向ぼっこをし、気ままに散歩をするきわめて自由で優雅な存在だ。しかし単独行動をしているように見える猫も、夜に集会を行ったり、縄張り争いをしたりと、他の猫を意識して暮らしている。
パリのルーヴルに暮らす猫のしきたりは、人間界に出入りしないこと。数多くの国宝が鎮座する博物館の屋根裏を寝床にしているのだから、目立った動きをしたら排除されてしまう。
しかし、うかつにも、ある1匹の猫が人間界に姿を見せるようになったのが、長老猫の逆鱗に触れた。果たして裁きの結果はいかに……。
<連載第7回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その⑦ 五十嵐大介の『ニケのうた』
(C) Louvre
(C) Taiyo Matsumoto
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