「バンド・デシネ」連載第37回目は、ロジェ・ルルーの『ヨーコ・ツノ(Yoko Tsuno)』について取り上げる。
この作品の主人公であるヨーコ・ツノは、日本生まれでベルギーに住む、一見普通のおしとやかな女性電気技師。しかし、いざとなると合気道と類いまれなる頭脳で悪の手から世界を救う正義の味方。空を飛び、宇宙に渡り、黒帯の腕で悪者を投げ飛ばす。
1970年に発表され、同じ作者により現在も制作が続いている、ベルギーでは誰もが知るロングセラー作品。まさに日本人が知らない日本の漫画だといえる。バンド・デジネの特徴と言えるリンヌ・クレア(Ligne Claire)というクリアーな輪郭線で描かれている。
ヨーコ・ツノは、パリ出身の日系人女優ヨーコ・タニをモデルにしていて、イラストの風貌もどことなく彼女に似ている。作品の舞台には、ヨーロッパやアジア、日本も登場する。時空を超える、ハイテクでエキゾチックなSF作品だが、実は精神性こそが本作の大きな特徴だ。そのSFの世界観に勝るとも劣らない友情や愛情などの人間ドラマがそこにはある。
<連載第36回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その㊱ アンドレ・フランケンの『マルスピラミ』
© Roger Leloup
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