「バンド・デシネ」連載第34回目は、ジャック・マルタンの『アリックス(Alix)』について取り上げる。
『アリックス』は1948年から制作が始まり、半世紀経った1998年に作者が失明した後もなお、作画を後継者にバトンタッチして制作が続いた作品。まさに生涯の大半をささげた大作だ。
フランス語で鮮明な線を意味するリンヌ・クレア(Ligne Claire)という手法が用いられ、影などを描くハッチングがなく、文字通りクリアな輪郭線が形作られ、バンド・デジネの一つの特徴ともなっている。
物語は、奴隷として売られ、後にカエサルの養子として迎えられる主人公アリックスの戦いと冒険を綴っている。正義感に溢れ、心優しく勇敢なので、やはり女性にモテる。しかし数々の魅力的な女性のアプローチにも、いつも躊躇ってしまうところが実ににくい。
古代の共和政ローマの世界を忠実に再現しており、実に壮観だ。史実に正確で、歴史の勉強にもなる。イラストを眺めていると、まるで博物館にいるように、当時の建築や衣装や武器のディテールを手に取るように知ることが出来る。
どん底からヒーローになるアリックス、そして作者であるジャック・マルタンの生きざまを見届けてほしい。
<連載第33回はこちら>
【漫画 × バンド・デシネ!】その㉝ フィリップ・フランクの『ラルゴ・ウィンチ』
©
Jacques Martin
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